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岡山家庭裁判所 昭和42年(少イ)10号 判決 1967年7月24日

被告人 原健治

主文

被告人を懲役参月に処する。

但し未決勾留日数中弐拾日を右本刑に算入する。

理由

(一)  (罪となるべき事実)

被告人は、

第一、昭和四二年三月一日ごろ、岡山市奉還町一丁目一二番二六号、岡山トルコセンターこと個室付浴場業上田軍平方において同人方の従業員である同人の妻上田アキヨに対して○野○子(昭和二五年八月一三日生)の年齢が一八歳未満であり、且右上田アキヨが右営業所において右○野○子を接客婦として深夜就業させることを知りながら、右○野○子を接客婦として就業させるよう依頼して引渡し

第二、更に同年三月一六日ごろ、同市田町二丁目一八番五号個室付浴場業「ニューエデン」において、同所支配人小橋敏郎に対して、前記○野○子の年齢が一八歳未満であり且右小橋敏郎が、右○野○子を右営業所において接客婦として深夜就業させることを知りながら右○野○子を接客婦として就業させるよう依頼して引渡し

たものである。

(二)  証拠(編省略)

(三)  法令の適用

判示児童福祉法違反の行為に対して

各児童福祉法第六〇条第二項、第三四条第七号

労働基準法第一一九条第一号、第六二条(懲役刑選択)

併合罪の加重につき

刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(重き判示第二の判示児童福祉法違反罪の懲役刑につき法定加重)

未決勾留日数の算入につき

刑法第二一条

(四)  弁護人の主張についての判断

(1)  弁護人は被告人が、判示行為を行うにつき判示上田アキヨが刑罰法令に触れる行為を為す虞れのある者であある情を知らなかつたと主張するが、被告人が右上田アキヨにおいて判示○野○子に判示のように深夜就業をさせることを知つていたことは前記証拠によつて明らかであるし、この知情をもつて前記犯罪構成要件充足に十分であつてこれ以上この行為が刑罰法令に触れるか否かについての認識はいわゆる法令についての知不知の問題であつてこの点は何等犯意欠缺の事由とならない(刑法第三八条第三項参照)。従つて、犯罪不成立の事

由に該当しないからこの主張は採用しない。

(2)  次に弁護人は、いわゆる引渡す行為とは、引渡す客体たる人が意思能力のない者かまたは意思能力があつても就職の意思のない者を強要してこれを引渡す場合に限ると主張するが、本件児童福祉法第三四条第七号の立法の趣旨は広く児童の福祉を保障する為の規定であるから(同法第三条参照)弁護人主張の如く狭く解すべきものでなく広く児童本人が就職の意思があり任意に引渡す場合も当然包含するものと解するのが相当であるから弁護人の右主張も採用しない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 三好昇)

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